kajuntk氏に会ってきた

最近僕をベタほめする気持ちの悪いエントリでホットエントリーに入るなどしているid:kajuntkに会うために有給休暇を取って葉山まで行ってきた。

少なくとも彼は僕よりも人間社会の動きにたいする理解が優れている。そもそも僕は他人の感情や認知の状態を理解する能力に乏しいから彼の視点からの指摘はとても参考になる。

まずカンファレンスのコモディティ化についての指摘。僕は「(日用品のように)誰でもどこでもいつでも入手できるようになること」だと考えて、それこそ1000speakersの目指しているものじゃないだろうか、と思った。しかし彼の言うコモディティ化は「参入障壁が下がることによって(それまでそれなりの熱意のある人だけだったところに)有象無象が参加するようになって全体のレベルが下がること」のようだ。

そしてレベルの低下によってレベルの高い発表をする人に取ってのメリットが薄れ、ますますレベルの低い発表で埋め尽くされる。これはカンファレンスに限らずいろいろなシチュエーションで繰り返されてきた現象だと僕でも分かる。

センスピがモデルにしてるGNUのモデルはそもそもリソースの有無というハイパスフィルターが実装されていたから成功したんだ。

だから、ハイパスフィルターを考慮しないでこのモデルをカンファレンスに実装すると絶対に失敗する。

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Re: Re: 「「勉強会の違和感」に感じる違和感」に感じる違和感 - Automatons Hacking Guide

僕は今まで「いかにして敷居を下げるか」に腐心していたけども、それだけではいずれ「くだらない話しかされないカンファレンス」になってしまう。なるほど、納得できる。ただ1000speakersの方針として「今までの発表経験でフィルタリング」ってのはしたくないので、なにかうまい方法を考える必要がある。

僕は「ジャンル不特定のカンファレンスじゃ自分の仕事に役に立つ内容が話されるとは限らないわけだから、それでも聞きにくる人は異分野の面白い話を聞くことに積極的な人だろう」というフィルタで十分だと思っていた。しかし「生Matz見れた、感激!」的なエントリーのを例に挙げて「世の中には単にミーハーな気持ちでカンファレンスに参加する人もいるので単に参加するかどうかだけではフィルタとして不十分だ」と説明された。なるほど。

だが一方で前にid:ripjyrさんが「カンファレンスの直前に理由を付けてドタキャンをするのは簡単だ。参加してくれただけで勇気を振り絞ってきたのだということを忘れては行けない」と言っていたのも記憶に残っている。単にフィルタを強めればいいという問題ではない。

結局のところ、僕やid:amachangの考え方は「いかにしてfalse negative(本当は面白いのに面白くないと思い込んでいる人)に自信を持たせるか」に偏っているのに対して、kajuntkは「単に敷居を下げるだけではfalse positiveが増えてしまう」という点を指摘しているわけだ。納得。

指摘の内容は理解できたと思う。どう設計すれば問題を解決できるかは今後考えていこう。

例えば:

  • 発表者数を減らして一人当たりの時間を増やす
    • 発表内容を見てからディスカッションする時間を多く取れる=ディスカッションに耐えれない内容に対して負のインセンティブ
  • 「既参加者枠」を設ける。最大50%。
    • 現状では2,3回参加した人が参加を自粛してしまうが、そのせいでほとんどすべてが「勉強会慣れしていない人」で埋め尽くされてしまって運営コストが跳ね上がる。初めて参加する人が50%いることを担保しつつ前に来た人も気兼ねなく参加できるようにする必要がある。
  • テレホンショッキング枠(紹介枠)」を設ける
    • なんらかの条件でqualifyされた人が、別の発表者をつれてくることが出来る。現状の「基調講演枠」がほぼこれに相当する。これをもうちょっと増やした上で、「紹介」できる人を主催者以外に広げる。
    • 何度か案として出ていて、発表のクオリティを高める上で悪くない選択肢だと思っている。枠の上限を定めて、紹介なしでの参加も一定数以上キープされるようにすれば会の趣旨にも反さないと思う。