マインドマップ日記12

先週末に自宅用のマインドマップの道具を買ったのを書き忘れていた。

前回は寺西工業のAQATEC SLIMを買ったのだけど、黒色の使用頻度がとても高いからかすれ始めてしまった。2/12から45日で45枚(見事に1日1枚ペースだ!)書いて、黒のペンがかすれ始める、と。

AQATECの黒ペンだけは売ってなかったので三菱鉛筆のPROCKEY細字丸芯を買った。よく見かけるやつ。PROCKEYはAQATECよりも黒が貧弱な感じで少し気に入らないけど、まあすぐ慣れるだろう。126円。

自宅と会社を持ち運ぶとさすがに重たいので自宅用にクロッキー帳をもうひとつ買った。同じ物。A3サイズ100ページ630円。マーカーは10色セットを買っても使わない色が多い(黄色とか肌色とか!)ので、よく使っている色だけ買うことにした。黒、赤、緑、青、橙、紫、水色、ピンク。枝を4本くらい出すときには赤、緑、青、橙をこの順番で使う。最大7本まで。紫は「二つのものとその中間」を表現するときに赤青と組合わせてよく使う。水色とピンクは修飾子としてよく使う。逆行列は水色線で表現するし、数式展開を書き間違えた時も水色やピンクで修正する。


眠い頭で数学のマッピングについて考える。

数学は高度に圧縮されている。プログラマが関数を組合わせてより高級な関数を作るように。例えばルール3が「ルール1によりA=B、ルール2によりA=C、よってB=C」と言う導出をされている場合、ルール3を納得するにはルール1とルール2を納得していることが必要である。そうでない場合は再帰的に「依存するルール」をたどる作業が必要になる。

ルールの依存関係はまともな数学の本であればDAGになっているはず。ルールのいくつかは依存するルールを持たない。それは公理であったり、読者は当然知っているだろうと思って証明を省いているルールだったり、「この本では解説しないので詳細については何々を参照」だったりする。

ソースコードに「どの関数を呼び出すか」は書いてあっても「なぜそうするのか」というコメントは書いていないことがあるのと同じで、数学でも意図に関しては「書いてあれば親切」だ。理由は「そう選択したら今得たいと思っているルールが得られるから」かもしれない。「なぜ」には現在の数学でも答えがない可能性がある。「そうしてもいいのか」にも答えがない可能性がある。ニュートンが物理学のために極限を使って微分を定義したのが1700年頃だが、それをやっていい理由をε-δ論法としてワイエルシュトラスが確立したのは1860年頃。オイラーが平方数の逆数の和が数値的に円周率を使った式で表されることに気づいたのが1740年頃だが、リーマンが生まれるのは1826年だ。んー、もっと「どうしてだかわからないけどこう選んだらうまくいく」って選択が後に説明された事例を上げたいんだけど思いつかないや。

数学が高度に圧縮されるのは、その扱う対象にノイズがないからじゃないかな。生物学だと「基本的にセントラルドグマです、あでも蛋白に翻訳されないRNAが他のRNAに干渉することもあるし、遺伝情報がDNAじゃないやつもいるし、etc.」と例外がたくさん入ってくるので圧縮が効きにくい。一方で数学や論理学は公理という作業仮説から演繹されたルールは作業仮説を否定しない限りくつがえらない。

部品と、その部品の組み合わせ方を知っていれば問題が解ける。つまり問題が解けないのは部品の知識か、その部品の組み合わせ方の知識が足りない。基本的に部品はそこまでの紙面で説明されているが、組み合わせ方は名前もなく必ずしも再利用性があるわけでもない。今読んでいるパズル本には「ルール1によりA=B、ルール2によりA=C、よってB=C」ってパターンの証明が頻出する(Kx=KとするとKxx=Kx、またKの定義よりKxx=x、よってKx=x、など)んだけどこれには名前が付いていない。問題を解く過程でその問題に共通して現れるパターンとして知覚されて名前のないまま内在化されている。PRMLでもそうだな、「分解して2次の項と1次の項で整理」とか「逆行列は等式の両辺に行列を掛けることで消す」とか「ベクトルの各成分で偏微分してそれを0と置く」とか名前付いていない。あ、積分消去とか平方完成みたいな名前の付いているものもあるか。

問題の解き方の解説を見ても納得できない場合は何が足りないんだろう。

数学のマインドマップをどの粒度までやるべきか、という議論だが、今日「マインドマップは主要な枝から書くから、主要なものが何かというすでに整理されたものしか書けないじゃないか」という意見を見てひとつわかったことがある。最初から完成版が書けると思うのは間違いだ。脳内の整理されていない状態を書きだしてみて、そして異なる枝に繰り返し現れるものや他の枝と関連する内容を強調しておき、次に書くときにはそれを昇格させればよい。そう考えると数学でも同じだろう。問題を書く過程をマインドマップにしてもよい。試行錯誤して、書いた結果が間違っていたり見当違いな計算をしたり、という過程をマップしてもよい。そしてそれを次に整理する際には間違った枝は多分除外すべきなんだろう。なかなか気づかなかったポイントは強調されるべきだろう。いくつもの問題で出てくる項目も強調されるべきだろう。

そしてそれらのマップをさらに整理する際には数式の細かい変形なども「展開して整理」だとか「xの次元で整理」とかのより抽象化された部品で置き換えるべき。それを繰り返して徐々に濃縮していくのがおそらく正解だろう。