ネタとしての黒歴史と本当の黒歴史について

「締め切りがないと、到達しないすごく遠いゴールに向かって走ってしまう」──カーネルハッカー・小崎資広(2) | サイボウズ式が公開されました。

公開前は「締め切りを設定することのメリット」に関して、いくつか他の実例を紹介したりしようと思っていたのですが、いざ公開してみると意外なことに小崎さんが勉強会発表動画を「黒歴史」と呼んだことについての反応がいくつかありました。

考えてみてください。自分がインタビューを受けて、そのインタビュー内容は記事になることがわかっているとします。「本当に人に知られたくない過去」について言及するでしょうか。

また自分の「本当に人に知られたくない過去」が動画として公開されている場合、その動画を公開した人に「おい、やめろよ」と言わないってことが考えられるでしょうか。言われた勉強会の主催者が「やだよ、消さないよ」と言って公開し続けることがありえるでしょうか。

ないない、ありえない。小崎さんが「黒歴史」と呼んでる動画は「本当に人に知られたくない過去」なんかではありません。あれは冗談ですよ。

プロカウンセラーの聞く技術」には「欠点や失敗談の話は、もっと大きな欠点や失敗を隠すためのものであることが多い」と書かれていました。あまり痛くない過去を「これは黒歴史なんだけど〜」と語ることでそれ以上の失敗談を話すのを避けているわけです。

僕が個人的に酒の席などでいろいろな人に聞き込みをした結果によると、おおざっぱに言って「表に出ている実績」の2〜3倍の量の「表に出ていない失敗」があります。で、この「失敗」は「酒の席で話せるレベルの失敗」なので、おそらくその裏にまた2〜3倍くらいの「人に言えない失敗」があるのだと考えています。失敗があることは悪いことではなくて、逆に言えば、それだけたくさんの挑戦をしたから、今の「表に出ている実績」があるわけです。

黒歴史」という言葉に対する反応を見ると、どうも僕や小崎さんの想定以上に「勉強会で発表すること」に対する恐怖心の強い人がいて、「勉強会の発表が動画で残っちゃってさ、黒歴史だよ〜(笑)」という笑い話が、笑い話ではなく本当の黒歴史であるように誤解されているようにみえます。小崎さんが伝えたかったことは「勉強会で発表すると黒歴史化するからやめろ」ではなく「動画が残ってちょっと恥ずかしいこともあったりするけど、でも発表するほうがいいよ」なんです。(本人に確認しました)

なお、このインタビューの目的は、エンジニアの学び方を探求することであって、小崎さんの秘密を暴き立てることではありません。そういうゴシップが読みたい人はタブロイド紙でも読んでて下さい。