やる気を出すシステム5000ユーザ突破記念エントリー

ひっそりと運用していた質問に答えるとやる気を出すためのアドバイスをしてくれるシステムがつい先日で5000ユーザーを突破しました。このシステムのおかげでやる気が出たという方も2000人いるようで、作ったかいがあったというものです。

ところでこのシステムは、用意した回答の中から適切なものが見つけられなかった場合に「なぜやる気がでないのだと思いますか?」と自由記述で問いかけて、あらためて自分の気持ちを見つめてもらうというのをやっています。これだけデータが集まってくると、この自由記述の中にも共通のパターンが見えてきます。そこで、5000ユーザ突破記念ということでいくつかピックアップして解説します。

自虐的レッテル貼り

「なぜやる気がでないのだと思いますか?」という質問に対して「ぐーたらだから」「クズだから」「怠け者だから」「ダメ人間だから」「いつまでたっても一人前の仕事ができないから」という種の回答をする方がいます。

自分に「ダメ人間」というたぐいのネガティブなレッテルを貼ると「自分はダメ人間だ。だからやる気がでないんだ。ほらやる気が出なかった。やっぱり自分はダメ人間なんだ」というループに入ってしまいます。

冷静に過去のことを考えれば、うまく行ったこともうまく行かなかったことも両方あるはずなのですが、なぜかうまく行かなかったことばかり注目し、そして「いままでずっとうまく行かなかった、だから未来もずっとうまく行かないんだ」という一般化をして、その自分がつくりだした考えで自分自身を苦しめる自己破壊的な状態です。

このループから抜け出すには、まずは「自分は今、間違った思い込みをしているんだ」ということに気づくことが大事です。

「いつまでたっても一人前の仕事ができないから」と回答された方は、きっと身近に「お前はいつまでたっても一人前の仕事ができないな」というレッテル貼りをしてくる上司がいるのかなと思います。でもその人は神様でも何でもなく、あなたの未来を予知する能力もありません。あんまりその人の言葉を真に受けないほうがよいでしょう。

「やるべき」思考

このグループはさらに3つに分けられます。

  • 「それをやる価値がない」「それをやっても何も得られない」「今、それをやることが必要だと思えない」という「価値がない」タイプ
  • 「やりたくない」「根本的にやりたくない気持ちがある」「やりたくない、と考えてしまう」という「やりたくない」タイプ
  • 「そもそも達成不可能」「できる気がしない」「できないことをしている」という「達成できない」タイプ

やる価値がないのであれば、やらなければいいのでは?やりたくないのであれば、やらなければいいのでは?達成できないのであれば、やらなければいいのでは?

素朴にこう質問すると怒ってしまう方もいるかもしれません。でも、あなたは「やるべき」「やらなければいけない」と考えていますよね?それはなぜなのですか?本当にそれは正しいのですか?

「全か無か」思考

「失敗が怖い」「完璧にしたいがキャパがない」「失敗して自分が傷つくのが辛い」「失敗したら立ち直れなくなる」「完成しても確実に得たいものが得られるかどうかわからない」という回答もありました。

完璧にしたい。確実に成功したい。確実に成功できないのであればやりたくない。この考え方は非現実的です。世の中のほとんどのものは完璧ではありませんし、確実に成功する方法もありません。それなのに完璧・確実なものだけがよいもの、それ以外はダメなもの、と考えてしまうと、ありとあらゆるものがダメなものになってしまいます。あなたの要求は高すぎるのでは?

やりたいことがない

「目標がない」「夢が持てない」「やりたいことが見つからない」「本当は遊んでいたい」という回答もありました。

うーん、だったら遊んでいたらいいと思います。それではなぜダメなのですか?誰かが「みんな夢や目標に向かってがんばる *べきである* 」って言ったからですか?そんな意見を真に受けて心に痛みを抱えるくらいだったら、無視してしまえばいいのに。

こういう主張に対して「いや、遊んでいたら生きていけない、生活費を稼がなきゃ」という反論があるかもしれません。ならば目的は「生活費を稼ぐこと」ですよね。その目標を「夢がない」とか言う他人がいるかもしれませんが、「夢がなきゃいけない」ってのはその人の勝手な思い込みであって、あなたがその思い込みに従う必要なんてありません。

体が悲鳴を挙げているタイプ

「ストレスで死にそう」「体が重い」「疲れている」「眠い」…。

休んだほうがいいですよ。特にニュースサイトやはてなブックマークGunosyなどからいらしたあなた。そのページを読むことは今のあなたにほんとうに必要なことなんですか?体に苦痛を感じながらも続けないといけないようなことなんですか?

やる気がでないのはこのシステムのせい

「アドバイスが的確ではないから」「おまえのせい」「このアドバイスが無意味だと知っているから」

えっ、それはおかしいですよね。やる気がでないからこのシステムを使ったんですよね。「やる気がでない」が時間的に先なのに、システムを使ったことがやる気がでないことの原因になるのはおかしいですよね。地震が来て神木が倒れて「神木が倒れたから地震が来たんだ」って言ってるようなもんですよね。

これとは逆に「やる気は元からあった」というコメントも複数の方から頂きましたが…えーと、やる気があったのに、やる気を出すためのサービスを使うために時間を使ってしまったということでしょうか…

どちらの方もかなりお疲れのようですから休んだほうがいいと思います。

時間に関して

やる気がでない理由を「まだ時間がある」という方と「時間がない」「忙しすぎる」という方がいました。真逆ですね。

やはりやる気を出すには適度な締め切り設定が必要なようです。時間がたくさんあるなら、自分で中締めを設定してみるとか。あと、例えば3週間後にレポートの締め切りがあるって場合に、3週間を「レポートやらなきゃな」と考えながら関係ありそうな情報を眺めたりして過ごすより、下調べなしで今1時間書けて最悪なクオリティのレポートをでっち上げて、それから「まともなクオリティにするにはどういう情報が必要かな」と思いながら3週間過ごすほうが、かかる時間やストレスの総量は少ないですよ。

考えがまとまらない

紙に書くのをオススメします。僕もこの記事を作る上で、たくさんのフィードバックを一度付箋に書き出して、それを整理してから書いています。

研究って何?

このコメントはグループではないですが、目に止まったので答えたいと思います。

きっとあなたは「研究をしなければならない」と思っていて、そしてこのシステムを使ってみて、自分のやる気がでない原因は突き詰めると「研究って何?」だと気づいたのですよね。「研究」が何をすることかわからなくて困っているのだと思います。

「研究とは何か?」という問に答えられないことが、やる気の出ない理由だとわかったのなら、次にすることは「『研究とは何か?』という問に答えるにはどうすればよいのか」と考えることですね。例えば指導教官や研究室の先輩に相談してみてもよいですし、言葉で聞くのが嫌であれば研究に関することが書いてありそうな本を読むのも良いでしょう。

そうやって何が問題であるかを突き詰め、問題解決のために何ができるかを考え、それを実行し、その過程から学んでいくこと、僕はこれが研究だと思っています。自分という研究対象を観察して、どうすれば「やる気でない」という問題を解決できるかを考えています。その研究結果が自分にだけ適用できるのか、他の人にも適用できるのかに興味がわいたので今回このようなシステムを作って実験しました。その結果、5000人中2000人の問題は解決できることがわかりました。残りの60%の問題を解決するために何が必要か、これは新たな問題として今後考えていきたいと思っています。

参考文献

「全か無か思考」や「レッテル張り」などが憂鬱な気持ちの人にありがちな「認知の歪み」の一種、という話がこちらの本(いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法)に書いてあります。ただ、700ページを超えていて、本当に憂鬱な気持ちの人が買うと分厚さに心が折れるんじゃないかという懸念があるので元気な人にしかオススメできません…

認知療法と意外に近いのが仏教由来の「考えない練習」です。こちらは薄いので読みやすいかと思います。