作りたいもの:技術書向きの電子ブックリーダ

昨日Twitterでつぶいたことのまとめ。こういうアプリが既にあったりしないのかなぁ。既にあるなら喜んでそれを使うんだけど。あったら教えて下さい。

技術書と小説の違い

  • 技術書の小説と大きく異なる点は、シーケンシャルアクセスじゃなくてランダムアクセスが必要になるケースが多い点だ。
    • 小説のように頭から順に読んでいくのではなく「ざっくり眺めておいて必要なところだけじっくり読む」という読まれ方のニーズがある。
    • 「ざっくり斜め読み」をどうやって電子ブックビューワ上で実現するか?
    • ページを画像として縮小しても漫画じゃないから「全く読めないゴミ情報」の山にしかならない。章タイトルだけ表示とか、太字や図などだけ表示とかが必要
    • ざっくり読んだ後の「あれどこに書いてあったっけ」支援のために検索とタグクラウド(検索キーワードのサジェスト)が重要
  • 縦書きの対応は必要ない

理想を高く持つ

  • 電子書籍ビューワはページを折るのと同じくらいの労力(1フリック)でページに栞を入れることが出来る必要があり、またおられたページを開くのと同程度の労力でそのページを開ける必要がある。
  • 電子書籍ビューワは、付箋を取って貼るのと同程度の労力(2フリック)で文中の任意の場所にマーカーを入れることができなければならない。また付箋が貼られたページを開くのと同程度の労力でそのページが開けなければならない。
  • 電子書籍はページをめくるのと同程度の労力(1フリック)で同程度の時間以内にページがめくれなければならない。ページを曲げてペラペラペラっとするのと同程度以下のオーバーヘッドで、同程度以上のクオリティで眺めることができなければいけない。
  • 電子書籍は赤ペンで線を引くのと同程度のコストで強調ができ、付箋を貼って書き込むのと同程度のコストで書き込みができなければならない。赤ペンを手に持ったままの状態でページをめくるのと同程度の労力で同程度のことができなければいけない。
  • 付箋と赤ペンに関しては1アクションで使えるようにならないといけない以上、画面上に常時メニューが出ているか、もしくはジェスチャー1発で出せる必要があるわけだな。あと赤ペンを持っていてもページがめくれるためには赤ペンの可動範囲を制限するか、ページめくりを1本指だけでなく2本指でもOKにするとかが必要
  • 電子書籍が限られた画面サイズで1ページの情報を提示する際に単純に1ページの画像を縮小して表示するのは、非常に素朴な実装で、たしかにそれで満たせるニーズもあるが、全然足りてない。地の文を潰して空いたスペースで章題や太字の部分だけを表示するくらいやってもいい。斜め読みが必要とされるような書籍を対象にする上では、iPhoneでPDFを表示して、1ページ表示した時に1ページの画像が縮小されただけの読めないものを出して平気なのは想像力が欠如している。その状態でも何が書いてあるかが何となく分かるのが本来あるべき姿。
  • 電子書籍は実際の書籍を積むのと同程度のコストで「日常の中に一定の空間を締めて存在をアピールし、ふと気が向いた時に手に取れる」という状態になる必要がある。そのためにはおそらく「モバイル端末の1アプリ」だの「電子ブックリーダ」だのの状態にとどまっていてはダメだろう。

書き込むことが汚すこと(=マイナスの価値)ではなくプラスの価値になる

  • ページに書き込んだり付箋貼ったり赤線引いたりドッグイヤーできることは当たり前で、むしろ本を読みながら書いたメモや同僚と議論したホワイトボードの写真、マインドマップなどを本に差し込む機能が重要だと思う。
  • 紙の本だとそう簡単に切ったり貼ったり差し込んだりできないが、デジタルデータなら「オリジナル」は残しつつ、そこから派生した抜き書きスクラップ帳を作ったり自分のメモを差し込んだりしてより自分向けのアンチョコを作っていくことが簡単にできるはず。
  • 電子書籍ができること。積まれている状態をシェア。書き込み(能動的なメタ情報)をシェア。どのページをどの程度の時間開いていたかなどの統計情報(能動的じゃないメタ情報)をシェア。どんなに書き込みをした後でも汚れてないオリジナル版を読みなおすことができる。
  • 図書館で借りた本に書き込むのは行けないことだという思い込みがあるが、昔京大図書館で借りた本の余白に、本文の間違いについて几帳面な字で書き込んであってとても助かったことがある。書き込みが侵襲的な紙の本はそういうコミュニケーションのハードルを上げてしまっている。
  • 電子書籍ビューワは二次創作のプラットフォームになることもできる。技術書の難しい点に補足説明やサンプルコードを書き足すことも二次創作だし、普通の小説を読みながら余白で腐女子が妄想をたくましくするのも二次創作。それがプラットフォーム足りえるには、場を区切る機能が必要不可欠。
  • 紙の本に対して書き込むことが元の状態に復元できない汚損なせいで、書き込むことをためらう人がたくさん生まれてしまった。これは大きな損失だ。
  • 電子書籍ならできること:正誤表を配る代わりに、その本に対するオフィシャル書き込みとして配布。読者が疑問点などを書き込んで投稿。著者が返事をしてくれたり、誰か他の人が答えてくれたりする。コンテンツを下敷きにしたコミュニティ。

まとめ

  • うーむ、書いてみて思ったが、小さい画面での要約表示が一番欲しいな。一番難しそうだけど。次に欲しいのがパラパラめくりで、これもなめらかに動かすためにはデバイスの性能が問われるところだな。残りは全然難しくないと思うけどどうだろう。

反響など

  • @atsuoishimoto: 技術書用には、「よく見るページ」機能が欲しいな
  • @voluntas: そしてソーシャル機能があって「他の人はよくこのページを参照しています」って出るんですね、わかります。
  • @nishio: むしろ僕がブログに書評を書いたついでに「なお僕がどのページをどれくらい開いていたかはこちらのアプリを入れると見ることができます」ってやればいいんだろ。あ、そうかむしろそのアプリで書評を開くと引用からジャンプできたりするのか!
  • @sir24de3: それはlindocと言うプラットフォームである種実現されています。
  • @koizuka: 付箋って開くまで該当部分が見えないけど、電子なら内容抜き出しが列挙されてていいよなぁ
  • @lostnumber00: 要約表示はラインを引かれた物の統計情報で作り出せないのだろうか。鶏卵論に発展しそうだけどw
  • @tagomoris: 小さい画面での要約表示って見出しのみの表示 + 図表の縮小でなんとかならないかなーと思った。たいてい見開きにひとつくらいは小見出しあるよね
  • ‏@kyo_ago: その場でコードを書き換えられて実行できる書籍がほしい
  • @atsuoishimoto: 電子ブックリーダはスライダーかジョグダイアルでページぱらぱらしたい。マークがページでは指にクリックというかカチッとひっかかる感じのフィードバックがあって、慣れると画面を見なくてもクリック感覚だけで目的のページを表示できるとか欲しい