量子将棋:15手で王将特定に至った棋譜を解説

棋譜: http://shogitter.com/kifu/1059

1: 先手、いきなり香車飛車で突撃

2: 後手、横に動いてそれを取る。この結果、横に動いた駒は金飛車王に収束。

3: 先手、開いた隙間からさらに香車飛車で突撃

4: 後手、これも横に動いて取る。この駒も金飛車王に収束。

5: 先手、相手の駒の可能性を奪うために、相手から取った駒を打つ。1六「角かもしれない(実は飛車かもしれない)」打ち。隅っこから角道で隙間を狙っているのでとても角っぽい。これはブラフ。

6: 後手、角だと考えた場合に狙われている風の駒を避ける

7: 先手、打った駒を横に3つ動かす。これによりこの駒が飛車に確定。そして後手の金飛車王は飛車の可能性を奪われて金王に収束。この金王を飛車が狙う形になる。

8: 後手、飛車で狙われている金王を避ける。

9: 先手、相手から取った駒を打つ。これは「歩香桂銀金角」である。次に下に下げることで金に確定させ、その結果相手の2つの金王の片方が王であることを確定させる狙い。

10: 後手、香車飛車で先手の飛車を狙う。

11: 先手、飛車で後手の香車飛車を取る。これをやらずに予定通り「下げて金」をやると飛車をただで渡すことになるから。(追記:ここは左に寄るとか、無視するとかでもよかったかもしれない。後の展開に重要ではない)

12: 後手、なぜか先手の飛車を取るのではなく、突撃をする。残念ながら7手目で僕が「相手から取った駒を飛車に確定」しているせいで、後手の駒に飛車の可能性は残っておらず、これは香車飛車ではないただの香車になる。

13: 先手、予定通り「下げて金」を実行。この時点で先手の竜王の斜め後ろとその後ろにある金王のどちらかが王であることが確定。

14: 後手、成香でその金を取る。(重要ではない)

15: 先手、竜王で斜め後ろの金王を取る。取られた金王が金であったことが確定するため、残りの金王が王に収束。先手の未確定駒はまだ角の可能性を残しているので、動ける場所がない「9七角」「5九飛」「1七角」「5二龍」の4重王手で詰み。

考察

というわけで、香車飛車で飛び込んできた駒を横に動いて取るのはかなり悪手の可能性が高い。取るとすれば「同じ列の香車飛車で取る」「桂馬で取る」「角で取る」などが考えられるが…お互い1手ずつ消費して、先手が得たものはオールマイティ、後手が得たものは香車飛車で、しかも1枚かなりの収束。うーん、この交換は損じゃないか?多分後手は「同様に香車飛車で先手陣地に突撃」がよいのではないかと思う。

普段の将棋では隅っこに追いやられてあんまり活躍の機会のない香車が、量子将棋では真っ先に突進して敵を鹵獲する素晴らしい駒になってて面白い。

先手が一番槍でどこを貫くべきかってのは、まあ少ない収束で取られる2列8列はなしとして、本当に5列でいいのかどうかは自明ではない。1,3,7,9列では自然に「斜めに上がって取る」を選択されそうな気配があるので、不特定の人と対戦する上では自然に「横に動いて取る」を選択しそうな4,5,6列のどれかを撃ちぬくのがいいかもね。でも、今こうやって「横に動くのは悪手っぽい」という情報を公開したので、今後この方法であっさり王を特定して勝つのは難しくなるかもね。さあ、次の戦略を考えよう!