量子将棋:自分が負けた棋譜を解説

先手有利説が濃厚な量子将棋だけども、筆者は先手で負けてしまったので反省と復習のために棋譜解説。

棋譜はこちら:http://shogitter.com/kifu/2204

1: 先手5三香飛、後手同香飛。
3: 先手4三香飛。5三の香飛を取り返すよりも、こっちのほうが収束の進んでいない駒が取れるので有利ではないかなと考えている。
4: 後手同飛。香飛が横に動いたことで飛車に確定した。
5: 先手同香飛。後手同香。ここまでで先手の持駒は量子・量子・飛、後手の持駒は香飛・香飛・香飛。まだ先手有利な状況ではないかな。
7: 先手6一銀金角打。これは敵陣下段に打つことで歩香桂の可能性を消して強めの駒に収束させる手。
8: 後手6九飛打。これも香飛を敵陣下段に打つことで香車の可能性を消して飛車に収束させる手。
9: 先手7一金寄。銀金角が横に動くことで金に確定。
10: 後手7九飛成。まあ駒を取りたいわけです。

ここで先手の僕は考えた。駒の確定を嫌うプレイヤー同士の戦いではこの状態からお互いに駒を取り合う展開が進むことが多いけど、それはほんとうに正しいのか?駒確定を恐れすぎているのではないか?特に斜め移動は銀角王の4駒分の可能性があるので収束に時間が掛かる。銀角王への収束と飛車とだったら交換してもよいのではないか?

11: 先手同銀角王。
12: 後手4四量子打。

先手の僕はこの手の意味がわからなかった。だけども終局後に後手が真っ先に指摘したのが「12への対応を間違えたのが敗着」だったし、僕もそうだと思う。この手は次の手で角確定と同時に7一の金を取るか相手陣地に侵入するかの二択を掛けてる手。僕がここでやるべきことは銀角王を5七か4六に動かして角に確定させることだっただろう。でも気付かなかった。

13: 先手8一金寄。
14: 後手7七角成。この時点で先手の銀角王は銀王に収束してしまった。銀王になってしまうと先手はもはや自分の力でこれを銀に確定させることはできない。移動範囲がかぶっているからね。唯一の方法は相手に取ってもらうこと。でもまあ取ってくれるわけがないよね。

15: 先手同桂。これにより先手は持ち駒が、飛・飛・角・量子x3、というゴージャスな感じになった。
16: 後手9二量子打。これは銀でも金でもある先手由来の量子なので、僕の金が動かなければ銀に確定しながら取り、僕の駒から銀の可能性を減らせる。金が動いた時には金に確定しながら取って僕の駒から金の可能性を減らせる。
17: 先手9一金。後手同金。

19: 先手6一量子打。後手同角。これは先手がポカミスで量子1枚と相手側の角の確定を与えてしまった。
21: 先手5七量子打。相手陣へ打ち込んで駒を削っていくのに失敗したので手元で銀金の確定を進めて取りやすくしようと考えたが、弱気な手だった。
22: 後手1七香成。後手が攻撃に出る。同桂。1六香。2五桂馬。2四銀金打。3三桂成。同銀。

先手の桂馬が逃げまわったことで、先手は量子を1枚手に入れたが、後手に銀を1枚特定されてしまった。先手の銀王は未だ変わらず銀王だが、いわば「銀銀王から銀王への収束」が起きている。

29: 先手2九量子打。これは香車の攻撃を受けつつ後手の金の可能性を奪おうという手。1九香成。同金。後手の金が一枚確定した。

32: 後手2五香車。3六量子打。これも攻撃を受けつつ後手の銀の可能性を奪おうという手。2七香成。同銀。

36: 後手7五桂馬。
37: 先手無視して7一飛打。これは先ほど後手の銀の可能性を削ったことによって効きがなくなったマスで、同様の理由で9一の金にも効きがなくなったので金角両取りの手。後手7二量子打。9一飛成。
40: 後手無視して8七桂成。先手無視して4五桂。なんでこんな手打った…。

(中略)

53: 先手9七桂。これで後手の歩桂王から桂馬の可能性が奪われて歩王に収束。しかし歩王は9枚もある。しかも9列側は銀金が3枚もあるので攻めにくいなぁ。

(中略)

64: 後手9三銀。これで先手から銀の可能性が奪われ、銀王がついに王に確定。しまった、ガランとしたところで特定されてしまったぞ。こうなる前に例えば4七の歩銀金王を斜めに引くなどして銀王に収束させておくべきだった。そうすれば「どちらが銀でどちらが王か」が相手駒の動きでは確定しない状態になったのに。中略、70手目で先手が投了。

考察

銀角王への確定と飛車の交換自体に関しては、筆者としてはまだ悪いとは決まっていないと思っている。ただ、その手は「崖のそばの道」みたいなもので、崖の下に落ちないように細心の注意を払って進むべきだった。飛車を取った次の手は「角に確定」であるべきだっただろう。