U理論が面白い

U理論の本を流し読みしてたけど、これは結構面白い。

PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)は、既にサイクルが回っている人にとっては納得感があるのだろうけども、回ってない人にやらせようとすると「で、計画はどうやって立てるの?」で悩んで止まってしまったり、逆に問題に対する知識が不足してる可能性に無自覚なまま、詳細すぎる計画を立ててしまって、後からわかった情報で瓦解したりする。

科学的思考法の「仮説→実験→検証→修正」のサイクルでも、流行りのリーンスタートアップの「仮説検証のサイクルを高速に回せ」でも、やっぱり実際にやろうとすると「で、仮説はどうやって見つけるの」というところでつまずく人がいる。

この手の「サイクル」に入る手前でつまずいている問題について、僕はいままで「まず観察を」と言ってきたのだけど、U理論はこの部分を7段階に分けて考えている。

一つ目は、物事を既成概念に当てはめて見ている段階で、ようは「見えてない」状態。次に「見ている」段階があって、その次に「しっかり見ている」段階がある。ここまでは「まず観察」をブレイクダウンした感じ。その次がU字の底の段階で、この段階に入るには一度既成概念を手放さなければいけない。チクセントミハイのフロー状態とか、西田幾多郎純粋経験とかのような、判断を差し挟まずに問題と同一化している状態。それによって集まった経験がその次の段階で結晶化し、新しい理解が作られる。その次の段階がその新しい理解に基づくプロトタイプ作りで、その次が実践。

PDCAサイクルが回り始める前に、まだPの材料となる知識がない状態から最初の一歩(D)をどう踏み出すか、に特化した本だと言えるだろう。

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追記:
この記事がきっかけで、著者の中土井さんと対談をさせていただくことになりました。
U理論はエンジニアの学び方を変えられるか?――中土井僚×西尾泰和、過去の枠組みにとらわれないイノベーションのプロセスを考える | サイボウズ式
エンジニアがイノベーションを実現するための7ステップ──中土井僚×西尾泰和、U理論で未来から学ぶ方法を解き明かす | サイボウズ式


参考文献:
U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術
人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門


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